スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
偶像少女【アイドルマスター】 vol.15


 おにぎりを食べ終わるまではテコでも動きそうにもない美希を諦め、二人のほうへと向き直る。
 すると、こっちにまで矛先が向いてきた。
「あなたも! 春香が可愛いからって、ホイホイついてこないでください!」
「うぐ……」
 春香と呼ばれている女の子が可愛いと思っていたことは事実なので、口を噤んでしまう。
「それに、そんな気楽にアイドルになれるなんて思われてもこっちだって迷惑です! 妹とデートごっこだかなんだか知りませんが、続きをどうぞ!」
 なんだか連れてこられただけで散々な物言いだが、ここで言い返しても埒が明かない。
 そう思っていると、思わぬ方向から口が挟まれた。

「ごっこ遊びなんかじゃないの!」
 おにぎりを食べるのに夢中だったはずの美希が、ご飯粒を俺に飛ばしながら眼鏡の子に言い返す。
「さっきから聞いてるとお兄ちゃんのことシスコンとか甲斐性なしとか職なしとか、言いすぎなの!」
「何一つ言われてねーよ!!」
 絶対聞いてなかっただろ!
「それにアイドルくらい簡単になれるの」
 美希のその言葉に眼鏡の子の目が明らかに変わる。
「へぇ……それじゃあ今この場で歌ってみてくれる? それくらい簡単なのよね?」
「ふふん。吠え面かかせてやるの」
 そう言って美希がこちらをチラッと見て笑う。美希のやつ――福音を使う気だ!

「妃美聘音【トップアイドル】――」
 歌名を小さく呟き、美希の声が聴くもの全てを魅了する旋律を奏で始める――
「なに……これ」
「ほぁぁ! すっごく上手いですよ!」
 律子と春香が感嘆の息を漏らす。
 そんな二人も、それ以降声を出すことすら忘れ、どこか聞き覚えのある美希の歌に目と耳を奪われる。
 静寂の中、美希の歌声が部屋を音符で埋め尽くし、陳腐な言い方をすれば全てを美希の色に染めていく。
 それがとても心地よく感じる。
 この一瞬が永遠に続くかと思われたが、その時間は不意に破られる。

スポンサーサイト
偶像少女【アイドルマスター】 vol.14


 雑居ビルの一室へと招きいれられる。中は普通の事務所と言った趣で、意外とまともだった。
 少なくともここで変なビデオを撮られるようなことはなさそうだ。
 いや待てよ。オフィス系ならありだな。
 事務の人を後ろから抑えつけ無理やり……そう、ちょうど目の前にいる眼鏡を掛けて気の強そうな女性を屈服させるような――
 とちょっとここには載せられそうにもない妄想が脳裏を駆け巡る。
「なんですか?」
「なな、なんでもありませんっ」
 ギロッと言う効果音が聞こえそうなほど鋭い視線に、既に俺の心が屈服していた。

「で、春香。この人たちは?」
「やだなぁ。律子さんがスカウトして来いって言ったんじゃないですか」
 あははと笑う女の子に、律子と呼ばれていた眼鏡の子が更に目つきを鋭くする。
 だが、女の子は全く意に介さないどころか、手柄を褒めてほしい子犬のように頭を差し出す。
 その頭を、眼鏡の子は思い切りグーでどついた。地味に痛そうだ。
 殴られた女の子は涙目になりながらも瞳に疑問符を浮かべる。
「春香ねえ。あんた仮にもアイドルなんだから、そのアイドルがスカウトしに行ってどうするのよ!」
 あ、この子アイドルだったんだ。
 言われて納得する。確かにそこらのアイドルよりも全然整った顔をしているし。
 それに見ているだけでこちらも釣られてしまう笑顔は、とても魅力的だった。
「とりあえず拾った場所に戻してきなさいっ」
 俺たちのこと犬猫と間違えてるんじゃなかろうか。いや、わかってて言ってるんだろうな。
「でもでもせっかく来てもらったんですし、面接くらいしてあげても」
 女の子が必死にフォローをしてくれる。
 けど俺たちもアイドルになりたくて売り込みに来たわけでもない。
 えっちなビデオに出演するわけではないが、これ以上ここにいてもややこしいことになるだけだ。

 ここは大人しく帰ろうと美希のほうを見る。
 ……すでにもらったおにぎりをもきゅっていた。
「もきゅもきゅ。なの?」
 こいつ……状況を把握する気もねぇ!

偶像少女【アイドルマスター】 vol.13


 ゆっくり話をするために場所を変えると言われ、ついていくこと10分。
 すぐ着きますから! という言葉からすると正直微妙な時間だった。
 居酒屋が1Fにある雑居ビルに女の子が意気揚々とあがっていく。
「遠慮しないでこっちあがってきてくださいー」
 女の子が階段の踊り場からこちらに声を掛ける。
「遠慮というか……なぁ?」
「なの」
 俺は女の子に案内されたビルを一歩引いて眺める。

 何というか、ほどほどにボロく、少なくともアイドルになるための事務所が入っているようには見えない。
 むしろえっちなビデオを撮影するための事務所と言われても、驚きはしないだろう。
 俺はみないが。

 美希も俺と同じ気持ちのようで、怪訝な表情を隠そうともしていない。
 さすがにえっちなビデオとかはないだろうが、怪しげな宗教的なものはありそうだ。
 俺たちは互いに頷き合い、元来た道へと踵を返す。
「ちょ、なんで帰るんですか!?」
 追いかけてくる女の子を尻目に、美希と腕を組んで歩きだす。
「そろそろ映画の時間だなー。急がないと遅れちゃうぞっ」
「なのー。急がないと次のけいおんの上映に間に合わないのー」
「さすがにそのチョイスはどうなんだろう……」
 白々しい会話を続けながら歩きだすが、その腕をガシッと掴まれてしまう。
「お願いしますーっ! 話だけでもーっ!! おにぎり出しますからっ」
 なんでおにぎり!? そこは普通にお茶出せよ!
 っていうかおにぎりとか出されたら……
「行くの」
 絶対こうなるんだから。俺はため息をついて諦め、雑居ビルへと向かうのだった。

偶像少女【アイドルマスター】 vol.12



「えっと、今暇ですか?」
「す、すいません。俺待ち合わせなんで」
 地面を見つめ、ぼそぼそとなんとか返す。
 いや、だってこんな可愛い子に声掛けられたら直視できないって!
 彼氏いない歴=年齢な俺にはちょっと難易度高い。
「? そ、そうですか……」
 女の子がこちらを一瞥した様子を見せ、そのあと悲しそうな声色で呟く。
 なんだか罪悪感がひしひしと胸に積もってくる。
 正直美希とのデートの約束がなければ即座についていってるところだ。
「うう……でもこのまま成果なしで帰ったら、律子さんに何されるか……ひぃっ! 春香、頑張れ!」
 ぶつぶつと何か呟きながらよしっとガッツポーズを取っている。
 ちょっと天然入ってるのだろうか。
 それにしても、これだけ待って美希が来ないってことはもしかしたら、兄とのデートが面倒臭くなって家で寝転がっているのかもしれない。
 いや、その可能性大だ。
 ならこの子の話を少し聞くくらい問題ないってなもんだろう。
 よし。この子がもう一度話しかけてきたら返事をしよう。
 そう意気込んでも、自分からは声を掛けられないチキンである。

「あの――アイドルに、なりませんかっ!!」
「わへ?」
 わかりました。と答えようと口を開けた状態のまま、俺は固まっていた。
 アイドル? 歌って踊る? フリフリの服を着て? いや、今は男のアイドルもいるか。
 どちらにしろ俺がそんなのになれるわけがない。
 きっとこれは勘違いだ!
 ぶんぶんと首を振って意識を保とうとすると、俺のすぐ隣に見慣れた金髪がって――

「だから、無理だって言ってるの」
「やっぱり美希だったー!!」
 そうですよね! 俺なわけないですよね!
 思ったよりもショックを受けている自分にショックを受ける。
「て言うか、美希お前いつからそこにいやがった!!」
 突然俺が大声を上げたことに女の子が驚いているが、当の美希は何興奮してるの? と言わんばかりだ。
 まぁ気付かなかった俺も俺だが。
「お兄ちゃんが浮気しないかどうか見張ってたの」
「いや、浮気も何もまず付き合ってないからな、俺たち」
「音楽性の違い……なの」
「それも違う!!」
「あ、あのー」
「つーか、こんな無駄な時間過ごしてるくらいならさっさと出かけたほうが良いだろ!」
「待ち合わせの時間もデートの一部、なの!」
「すいませーん」
「デートっていうなら一緒にいたほうが楽しいに決まってんだろっ」
「あふぅ。お兄ちゃんが他のカップル見て憂鬱そうにしてる表情……とっても楽しかったの」
「ドSすぎ!?」
「私の話も聞いてくださいっ」
 女の子が俺と美希の間に身体を投げ入れてくる。
 そういえばすっかり忘れていた。普通に家の中にいる気分だった。
「ううっ……アイドル。アイドルにぃぃ。律子さんがぁぁぁっ」
 俺と美希の服を掴み、涙ながらに訴えかけてくる女の子の必死さに、俺と美希は話だけでも聞いてあげることにしたのだった。
 女の子の最後のほうの言葉はよくわからなかったが――

偶像少女【アイドルマスター】 vol.11


「ごめーん、待ったぁ」
「いや、今来たところだから」
 そんな定番なやりとり、本当にあるのか。と思いながら隣で待ち合わせていたカップルを見送る。
 普段ならばリア充爆発しろ! と言いたいところだが、今日の俺は違う。
 何せ俺もデートなんだからな! 妹とだけど。
「……」
 やっぱりリア充爆発しろ、と言ったほうがいいのかもしれない。
 そんなことを考えながら、リア充御用達である犬の銅像が建っている駅前広場で美希を待っていた。
 俺と同じく待ち合わせをしている人たちが、まるでババ抜きをしているかのようにペアを作っては消えていく。
 1ペア、2ペア……そして気が付いたらトランプが全部なくなってしまうほど時間が経っていた。
 いや、確かにここならそれくらいあっという間かもしれない。
 それでも想像以上に遅い。
 俺は家を出るときのことを思い出していた。


「んじゃデートとやらに行きますか」
「なの」
 俺も美希もTシャツにジーパンと言う普段着のまま、揃って玄関へ向かう。
 正直デートと言うより兄妹で出かけるだけなので、着飾る必要もない。
 と思っていたが、なんだか逆にペアルックみたいになっていた。
『さすがにこれは微妙だろ』
『え? 美希別にこのままで良いの』
『いやいやいや。今日びペアルックて。あり得ないだろ』
『んー。じゃあお兄ちゃんが着替えて来ればいいの』
『俺? 俺もう靴履いちゃったし』
『意味分かんないの!?』
『うむ。仕方ない。互いに譲る気がないのならば、ここは古来より伝わる武術で勝負を決めるとしよう』
『わかったの。異論はないの』
『じゃーんけーん――』
『ぽんっ』

 というわけで、美希が再び着替えるのを待たずに先に出た俺が、こうして待ちぼうけしているのだった。
 着替えるのを待っていようかとも思ったのだが、美希に「ついでだし待ち合わせにするの!」と言われ、ほいほい乗ってしまった俺も俺である。
 だって、待った? 今着たとこ。ってやってみたかったし。
 ……ええ、ええ。そうですよ、彼女なんていたことありませんよ!
「あのー、すいませんっ」
 一人で勝手にいじけていると、不意に声をかけられた。
「?」
 声のしたほうを見てみると、身長160cmくらいだろうか。髪の両サイドにリボンをつけ、お人形のようにかわいらしい女の子が立っていた。
「?」
 なんだろうか。キャッチとか街頭アンケートだろうか。
 だとしてもこんなに可愛い子に声を掛けられたら、男ならついていってしまっても仕方ないだろう。
 そう思わせるほどの魅力が彼女にはあった。

copyright © 2006 ツンツンピヨツン♪ピヨツンツン♪ all rights reserved.
Powered by FC2 blog. Template by F.Koshiba.
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。