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偶像少女【アイドルマスター】 vol.10



「お兄ちゃんも鍵しめるべきだなって思うの」
「はい。はい。本当すいません」
 昨日と同じ様な状況で、逆の展開となっていた。黄緑的な意味合いで。
 って、いつも通りの展開も良いのだが、今日は美希に言わなければならないことがある。
「あ、そういえば俺、社員の話なくなったわ。てへ」
 とりあえずできるだけ軽いノリで言ってみた。
「あふ、またなの?」
 悲しいことにこれもいつも通りの展開だった!

「んー。それじゃあ明日デートするの!」
 俺に気を使ったのか、美希がそんなことを言ってくる。
 明日はちょうど休みなので、新しい仕事を探しにでも行こうかと思っていたところだ。
 でも確かに息抜きというか、気分転換は必要だろう。
 美希とデートと言うのは心惹かれるが、妹とデートと言うのも何というか、あれだよな。
「というか、妹としかデートしたことない俺って」
「あふぅ。美希もお兄ちゃんとしかデートしたことないの」
「それは当然ですっ!!」
 美希が!! 知らない男と!! デート!!
 そりゃあいつかはするのだろうけど、そんな美希とまだ見ぬ彼氏を想像するだけで……
「お兄ちゃん、泣いてるの?」
「寝とられとか意味分かんないっ」
 俺の想像では、彼氏に美希を寝とられたことになっていた。
「悔しいっ、けど感じちゃう!!」
 そんなわけで、明日は美希とデートすることになったのだった――

「お兄ちゃん、ちょっとキモいの」
 美希が心変わりしなければ、だけど。

偶像少女【アイドルマスター】 vol.9


 ――なんて都合の良い展開、俺の福音にはあり得ないのだった。
「本当悪いことをした」
 目の前の男がちょっとだけ薄くなった頭頂部を惜しげもなく俺に見せつけている。
「いや、あの、ほら、しょうがないですから。頭をハゲ……上げてください」
 俺は俺で動揺していたのか、危うくNGワードを発動してしまうところだ。
「君のことはもうほとんど決まっていたんだがね……会社自体がね」
 一言で言うと、会社の経営がやばくなったので新しく人を雇っている余裕がなくなった、と。
 そういうことらしい。マジか。

 仕事が終わり、社員の人の第一声が「すまん。社員の話、なしになった」だった。
 結構期待していただけにショックを受けつつ、頭の片隅ではやっぱりなと思ってるのも事実だった。
 また福音、か。本当、こんなもの呪い以外の何物でもない。

 それ以降も謝ってくる社員の人に、気にしないでくださいと言って帰路につく。
 話を聞いていると、社員の人も厳しそうな話だった。
 それでも俺のことを気にしてくれたのは、紹介した罪悪感もあるのだろうが、良い人なのだと思う。

 てくてくと歩きながら、今後のことを考える。
 今の職場は社員になるのを前提としているところだったので、それが断たれた今、このまま続けるのもさすがにニート街道まっしぐらすぎる。
 やはりここは今の仕事を続けながら、早急に新しいところを探すのが現実的な路線だろう。
 方針が決まったところで気分も切り替え、家路へと急ぐ。
 こんな福音を持っているせいで、そういうところだけは得意になってしまっていた。


「ただいま、と」
 結局そこまで遅くならず、いつも通りの時間に帰宅。
 美希は先に寝ているのだろう。部屋の中は真っ暗だった。
 荷物を美希が起きない程度に乱暴に投げ捨て、ユニットバスへと向かう。
「……よし」
 一応電気が点いていないことを確認。
 まあ、さすがに美希も二日連続ではしないだろう。
 安心した俺は、着ていた服を脱いでは脱衣カゴへと放り込んでいく。
 ガチャ。
「あふー。おしっこおしっこ、なの」
「って、今度は逆ー!!」
 不意打ち気味に扉を開けられ、美希が買ってくれた黄緑色のパンツを惜しげもなく晒してしまう。
 とりあえず手でパンツを隠そうとしてみたりするが、男がシナを作ったところでキモいだけだ。
 美希はそんな俺の一人芝居に見向きもせず――

「あふぅ~~」
 ちょろちょろちょろちょろ……
「って、続行すんのかよ!!」

偶像少女【アイドルマスター】 vol.8


 ――ぶっちゃけ美希は可愛い。
 お人形と間違われるような容姿、モデル顔負けのスタイル、そして天然故の小悪魔的性格。
 それに福音がある。芸能界というところに入るのも夢ではないだろう。
 いや、むしろそのための福音なのかもしれない。
 少なくとも、うだつのあがらない兄と一緒にぐだぐだとやっているべきではない。
 街中で何回もスカウトに遭っていると言うくらいなのだが、本人は興味がないの一点張り。

 本当にもったいない。
 例えばだが、さっき美希が言っていた如月と、美希が一緒に歌ってるのを聴いてみたいくらいだ。
 きっと良いハーモニーを奏でるだろう。

「あふぅー、ごちそうさまなの」
『次のニュースです。現在巷で評判になっている聖歌星唱(サードスター)の三人が、携帯電話で通話しながら運転していた警察官を現行犯逮』
 プツッ。
 ――ちょっと気になった。
「お兄ちゃん、そろそろ準備しないといけない時間なの」
 美希に言われて携帯の時計を見る。
「お、そうだな」
 確かにそろそろ準備しないと間に合わないかもな。
 おにぎりの残りをお茶と一緒に流し込み、急いで使った食器を洗う。
 水を流しっぱなしのまま、スポンジにたっぷりと洗剤をかけては食器を磨く。
 水道代が気にはなるが、こうしないと汚れが落ちた気がしないのだから仕方ない。
「そうだ。今日社員の人と話して遅くなるかもしれないから、先に寝てていいぞ」
 はーいという返事を聞きながら、きゅっきゅと指先でお皿の汚れを確かめる。
 うん。ピカピカだ。今日も良いことありそうだ――

偶像少女【アイドルマスター】 vol.7



 ここで少し福音(スコア)について説明したいと思う。
 福音(スコア)が発見されてから早20年。
 徐々に、確実に増え、今では全世界の人口のおよそ1割程度にまで達しているという。

 誰が言い出したかは定かではないが、それは神が人に与えた奇蹟であり、祝福であり、福音である――と。
 与えられる福音はそれこそ千差万別。百人居れば百通りの、千人居れば千通りの福音がある。
 これもまた、人が望むべき福音はそれぞれ異なるものである、と言われたためである。

 その能力とは、時に風を操ったり、何もないところに火を点けたり、傷を一瞬で治したり――
 今までの人類では現実的に不可能なことを可能にする。それはまさに奇蹟と呼ばれるものだった。

 けれど、その実態は福音という名前とは裏腹に――呪いのようなものだ。
 俺のような福音の場合は特に。
『起承転欠【バッドエンド】』
 それが俺の福音の名前だ。
 読んで……というか、見て字の如く、最後が欠けている。
 要するに、良いところで絶対に失敗してしまうのは、俺のせいでも、運のせいなんかでもなく、ただ福音のせいなのだ。
 そりゃあ福音の一つや二つ、呪いたくなるってもんだろう。


「美希も気をつけろよ。お前の力、身を守るのとかに向いてないんだから」
「あふぅ。お兄ちゃんは美希のこと大好きすぎなの。美希、大丈夫だよ」
「べべ別に好きとかそんな話してへんわ!」
 図星をさされたわけでもないのに、なぜか動揺して関西弁になっていた。

 美希の福音――『妃美聘音【トップアイドル】』。
 美希の歌を聴いたものは、美希に好意を抱いてしまう、というものなのだが……
 美希はいわゆる一般人なので、他人が美希の歌を聴く機会などカラオケくらいしかない。
 宝の持ち腐れにもほどがある。

 テレビのニュースがひと段落し、間にCMを挟む。
「あ、この歌美希知ってるの」
 美希がCMで流れている歌に興味を示すなんて珍しい。
「これ、誰が歌ってるんだ?」
「えっと、確か如月千早って人なんだけど、すっごく歌がうまくて凄いの! それに、同じ学校らしいし」
 語彙の少なさにちょっと頭が痛くなるが、言いたいことは伝わるので良いとしよう。
 ついでに如月千早という名前をインプットしておく。
 兄として妹の趣味は把握しておく必要があるのだ。

偶像少女【アイドルマスター】 vol.6


 翌日、目を覚ました時には、美希はすでに普段着に着替えていた。
 うん。ちっとも寂しくなんてない。あるわけがない。
「お兄ちゃん、ご飯できてるのー」
 申し訳程度のキッチンから、今日の朝食登板である美希が声を掛けてくる。
 ちなみに、うちのご飯は一日交替で行っている。もちろん美希も例外ではない。
 というか、二人きりなので例外とか作る余裕がないだけなのだが。
 両親はというと、別に死別しているなんてことはなく、主人公にありがちな海外赴任というやつだ。
 俺にはよくわからないが、両親は知る人ぞ知るという音楽家らしい。
 まぁ当然のように普通の人は知らないので、収入なんてものはたかが知れている。
 そんなわけで、俺は美希と二人、質素な生活を余儀なくされているのだ。

 そんな誰に向かって説明しているのかわからないことを考えながら、着替えを終える。
 美希が遅い、とぼやいているのを聞き流しながらダイニング兼リビングに入る。
 うん。予想通りテーブルに並べられているのはおにぎりです。隔日必ずおにぎりです。

 向かい合わせで座り、食前の祈り……はしないけど、一緒に手を合わせる。
 テレビを見ながらおにぎりをほうばる。今日は高菜か。
 おにぎりの三角と黄緑色の具材。ほほう、昨日のパンツとおにぎりをかけてるのか。
 って、んなわけねー!
 ビシッと、妄想逞しい自分の脳に一人ツッコミを入れつつ、もう一口。
「どうどう、美味しい? 昨日のパンツの色とお揃いにしてみたの!」
「そんなわけあったー!!」
 微妙に食べ辛くなったおにぎりを更に一口。ふむ、これが美希のパンツの味、か。
 普通に美味しいのがちょっと困る。

『――今夜から明日にかけて、雨が降る予想です』
「もきゅもきゅ……あふう、やっぱりおにぎりは最高なの」
 頬をリスのようにした美希の顔を見ていると、こちらも自然と笑みの形を取ってしまう。
 べ、別にパンツのことを思い出してるわけじゃないんだからね!
 無意味にツンデレ風味にしてみても、変態に変わりはないな。

『次のニュースです。本日未明、20歳前後とみられる男性二人組が、福音(スコア)を使って銀行を襲い、現場から逃走致しました。現在も犯人は逃走を続けており、警察も行方を探しています』

「もっきゅもっきゅ。んー、最近物騒なの」
「だなー。それにしても福音(スコア)の犯罪増えてるよな」
「なのなの」

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